太陽光発電の屋根貸しメリット・デメリットまとめ

太陽光発電の屋根貸しとは、企業に自宅屋根を貸し出すことで金銭面の負担ゼロで太陽光発電の設置ができる仕組みになります

最近では自治体でも屋根貸しによる太陽光発電の設置をすすめているなど、普及も進んでいます。

ただ、一見良い事ばかりの屋根貸しですが、取り組む際にはしっかりとメリット・デメリットを把握しておくが大切です。

太陽光発電の屋根貸しのメリットとデメリットと最後に私の意見もまとめましたので、参考にしていただければと思います。

なお、屋根貸し以外の0円ソーラーに関しては別ページの『0円ソーラーとは?太陽光発電が初期費用0円で本当に設置できる?』をご覧ください。

屋根貸しのメリット

金銭面の負担ゼロで太陽光発電が設置できる

屋根貸しは設置者の金銭面の負担ゼロで太陽光発電が設置することができます。

新たなローンを組む必要もありません。

ただ、一定期間(だいたい10年程度)の所有権は企業側にあり、契約で決められた期間が経過すると所有権が設置者に移ります。

所有権が企業側にある期間は、太陽光発電に関するメンテナンス費用なども企業側の負担となる為、設置者は初期費用のみならず一定期間内の金銭面の負担はありません。

ちなみに、システムに不具合が生じた際も、家主の負担にはならずに企業側が負担してくれます。

個人の与信に関係なく太陽光発電が設置できる

屋根貸しでは、太陽光発電の所有権が企業側にあるので家主がローン審査することなく太陽光発電が設置できます。

なので、過去にクレジットの事故(滞納や踏み倒しなど)があっても、関係なく太陽光発電が設置できます。

あくまでも、屋根という不動産を企業に貸すイメージになります。

電気代が安くなる

太陽光発電の発電イメージ図
太陽光発電の発電イメージ図

太陽光発電によって作った電気を無償で使う事ができますので、電気代が安くなるというメリットがあります。

昼間に人が在宅するような家族であっても、晴れている日であればほぼ全て太陽光発電がまかなってくれる状況になります。

特にIHクッキングヒーターなどを使って昼間に料理をする機会が多いお宅であれば節電によるメリットは大きくなります。

ただ、当然ですが太陽光発電は夜間には発電しませんから日が沈んでからは通常通り電気を買って使う事になります。

停電時には非常用電源として使える

停電時にはパワーコンディショナを自立運転モードに切り替えることで非常用の電源としても活躍してくれます。

自立運転とは、太陽光発電で作った電気を自分の家で使えるようにパワーコンディショナの設定を変更することを言います。

災害時に電気が使えるのは本当に心強くて、私も営業を行っていた時に2011年の東北大震災が発生して大規模な停電を経験しましたが、お客様からは炊飯器が使えたことや洗濯機が回せたこと、近所の人を集めて電気を分け合ったなどの声を聞きました。

2018年9月にも北海道にて大規模な停電(ブラックアウト)がありましたが、スマートフォンなどの充電に役に立ったなどの声が多く聞かれました。

広い屋根であれば固定の賃料収入が得られる

太陽光発電のシステムには10kW未満の住宅用と10kW以上の産業用に分けられます。

10kW未満の太陽光発電に関してはFIT法(固定価格買取制度)によって10年間の売電が認められていて、10kW以上の産業用に関しては20年の売電が認められています。

このように屋根の設置面積によって住宅用、産業用と売電期間が変わるわけですが、10kW以上のシステムが設置できる広い屋根であれば固定の賃料収入が契約期間中得られることもあります。

賃料収入はだいたい1㎡当たり300円~500円程度となります。

ただ賃料収入が得られる屋根には相当な広さが求められることになりますので、住宅用ではなく倉庫やビルの屋上などの施設が対象となります。

屋根貸しのデメリット

自宅屋根に適した太陽光発電が設置できない

屋根貸しではメーカーの選定は企業側が行いますので、そのメーカーが必ずしも屋根にとって最適なメーカーでない可能性があります。

太陽光発電の寿命は現在30年程度だと言われていますが、10年程度の屋根貸し契約が完了してから20年間発電してくれることになるわけです。

そのような長い視点で考えた時に、屋根にとって一番メリットのあるメーカーで設置すのと、企業側が決めたメーカーで設置してしまうのでは得られたであろう機会損失の額は膨大となってしまいます。

ちなみに、現在の太陽光発電はだいたい8年程度で費用が回収できると言われています。

売電収入が得られない

屋根貸しでは、金銭面の負担ゼロで太陽光発電が設置できる代わりに売電収入は企業側の収益となるため、設置者には入ってきません。

ここで問題になるのは、一定期間で設備の費用と売電収入どちらの方が大きいかという問題です。

2024年の太陽光発電の1kWあたりの価格は15万円程度になりますから、4kW設置で60万円です。

これに対して売電収入が一か月平均で10,000円程度だと仮定したら10,000円×12カ月×10年で120万円になります。

もちろん屋根条件が良いお宅や節電に励むお宅であれば10,000円よりも売電は多くなることになります。

屋根貸しでは当然、屋根環境の良いお宅に企業も営業に来ることになりますので、売電収入的にはデメリットになるお宅が多くなるという事です。

業者の倒産リスクがある

一般的には債権者に設備の所有権が移転され、事業が継続される場合が多いかと思います。しかし、設備が破損していて資産価値がない等の場合は事業継承がされない場合もあります。

Q19 設置業者が倒産した場合、設備はどうなりますか?

屋根貸しで考えなければいけない事の一つに、設置業者の倒産リスクです。

帝国データバンクでは2020年の太陽光関連事業者の倒産件数は79件で減少傾向にあるとのことですが、既に屋根貸しを行っていた業者も倒産しての例もあります。

設置業者が倒産してしまった際の太陽光発電の行方ですが、東京都多摩市の回答では上記のように、所有権は設置者に移るとだけ記載があります。

倒産業者には破産管財人(担当弁護士が選任されるケースが多い)が付くことになり、所有権は破産管財人に移る事になります。

しかし、屋根貸しによる契約はあくまでも設置者と業者の間で交わされたものである為に、業者と結んだ契約はそのまま継続とならない可能性も大いにあるわけです。

途中解約に重いペナルティがある場合がある

屋根貸しを契約期間中に途中で解約すると契約解除料が発生したり、契約によっては太陽光発電設備そのものを買い取るというペナルティが課せられることもあります。

途中解約の理由として想定されることは、建物の売却や住民の引っ越し、もしくは設置者も企業である場合には設置者側の倒産も途中解約の理由にあげられます。

設置者側にも安定した環境が必要になるわけですが、現在では大企業で働いていてもリストラや減給などの可能性もありますし、長期間の契約は設置者からしたらデメリットとしても考えられるわけです。

結論!屋根貸しよりも購入するほうがメリットが大きい

屋根貸しのメリット・デメリットを紹介しましたが、私は屋根貸しをするのであれば普通に太陽光発電を購入してしまったほうがメリットは大きいと考えています。

やはり契約満了後のほうが太陽光発電が活躍する機会は大きくなりますし、そもそも屋根環境が良いお宅であれば、設備の費用は売電収入で賄えてしまえます。

私のお客様では太陽光発電の毎月の支払いよりも売電収入が多いお宅も何件もありました。

ただ、それも100%ではありませんし、太陽光発電はどうしても日照時間に左右されてしまうので天候が優れない年や雪が多かった年には発電パフォーマンスが悪くなることもあります。

太陽光発電は30年程度の寿命がある設備になりますので、短期的な視点で考えずに長期に見てメリットを算出することをおすすめします。

ただ、過去にクレジットによる返済事故によってローンが組めない方には屋根貸しによる太陽光発電の設置は願ってもない好条件となるでしょう。

現在の建物環境を長期的に見て、屋根貸しによる太陽光発電の導入を検討するようにしましょう。

ちなみに、2000年(平成12年)6月より前に建てられた建物は改正建築基準法の関係から屋根貸しによる太陽光発電設置不可となるケースが多くありますのでご注意ください。

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