住宅用太陽光発電のメンテナンスにかかる費用

太陽光発電のメンテナンスの必要性

ただ、それでも定期的にかかるメンテナンス費用があります。

私が太陽光発電の営業をしていた頃(2011年頃)は太陽光発電はまだ高価なもので『お金持ちの家にしか設置できない設備』というイメージもありましたが、2011年から始まった電気の固定買取制度や補助金などの影響で、現在(2021年)では注文住宅のおよそ4割で太陽光発電が設置されている状況になりました。

これからさらに太陽光発電という素晴らしい設備が日本に普及していくことが考えられますが、やはりまだまだ日本と言うか世界的に見ても太陽光発電という設備の実績は乏しく、日本でもJPEA(太陽光発電協会)がデータを集めている状況です。

そうゆう状況の中での今回の太陽光発電の保守点検ガイドラインの改訂(詳細はページ下記)になりますので、より太陽光発電の点検などの維持管理の重要性が感じられます。

私も営業をしていた頃は『太陽光発電はノーメンテナンスでいけますよ』と言っていましたが、現在ではそれも通用しませんね。

業者を選ぶ上でも、太陽光発電を売るだけで終わりの業者よりも、定期的な点検サービスが受けられる所の方が重宝してきますね

まだまだ太陽光発電というと価格にばかり目が行きがちですが、点検サービスや実績なども業者、施工業者を選ぶ上では価格と同じくらい重要な項目であると言えるでしょう。

住宅用太陽光発電システムにおけるメンテナンス費用を、メンテナンスにかかる内訳、JPEAの保守点検ガイドライン、メンテナンスをしないことで発生するトラブルに分けて紹介します。

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太陽光発電のメンテナンス費用内訳

再生エネルギーと言われている、風力発電や火力発電、原子力発電の中で太陽光発電が優れている点の一つとしてメンテナンスにかかる費用が少ない事があげられます

一定の周期でメンテナンスが義務付けられていることから、任意ですがやっておいたほうがいいことなど何にどのくらいの費用がかかるのか、まとめてみました。

ちなみに今回の記事は、住宅用のメンテナンスや費用についてになります。

産業用(10kW以上の大規模なシステム)ではメンテナンスにかかる費用も変わります。

売電メーターの交換費用(電力会社比較表)

電力会社交換義務費用
北海道電力なし
東北電力なし
中国電力なし
四国電力なし
東京電力なし
北陸電力なし
中部電力なし
関西電力なし
※スマートメーターの位置を希望の場所に設定したい時には、別途費用がかかります

※15,000円〜30,000円
九州電力なし ―
沖縄電力なし

太陽光発電を設置すると、売電量をカウントしてくれるメーター(売電メーター)が新たに設置されます。

どこの家にも電気使用をカウントしてくれるメーター(買電メーター)が外壁などに取り付けられているかと思いますが、このメーターと見た目が同じメーターが新たに設置されます。

この売電メーターは10年ごとに交換の義務があり、交換費用は管轄の電力会社負担で交換してくれます。

全国的な流れから、今まで買電メーターと売電メーターの2つを設置して電気の売り買いを電力会社が管理していましたが、スマートメーターと言われる電子量計1つで売り買いを管理するようになりました。

スマートメーターでは、通信機能による遠隔検針の他に、住宅のエネルギーを管理する機器(HEMS)等への電力量データの提供などに対応可能な電気メーターとなっています。

今後ますます日本の住宅はHEMS化されることが予想できるので、スマートメーターは重宝されてくるでしょう。

HEMS(ヘムス)とは、Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略になり家庭の使用電力、太陽光発電で現在作っている電気、売っている電気などをインターネットで連携させて家庭の電気を見える化するシステムの事です。

なお、建物に取り付けられたスマートメーターは電力会社の資産となります。

パワーコンディショナのメンテナンス費用

太陽光発電売電の故障割合円グラフ
太陽光発電売電の故障割合円グラフ

太陽光発電の中で最も故障箇所が多いのがパワーコンディショナになります。

その為、パワーコンディショナに関しては任意にはなりますが、メンテナンスをしたほうがよいとされていますし、私もおすすめしています。

だいたい太陽光発電を設置してから10年前後経過したら、パワーコンディショナのメンテナンスをするようにしましょう。

パワーコンディショナのメンテナンス相場は、内部の基盤の交換になりますのでだいたい2万円〜3万円程度の費用がかかります。

おおがかりな作業ではないので1時間〜2時間程度で終わります。

ちなみにパワーコンディショナは20万円〜30万円する代物なので、壊れる前にメンテナンスをすることをおすすめします。

モジュール(パネル)高圧洗浄費用

モジュール(パネル)の洗浄
モジュール(パネル)の洗浄の様子

太陽電池モジュールは屋根で何十年と野ざらしになるので、当然チリなどが付着し、その影響で発電ロスが生じる事があります。

モジュール清掃に関しては、任意になるので発電ロスが気になる方はモジュールを高圧洗浄によって清掃してもよいでしょう。

自分でもできないことはありませんが、屋根に登って作業するので危険な作業になりますし、自分で清掃を行って太陽光発電をいじってしまってシステムに不具合がでてしまったら目も当てられません。

そうゆう意味で、モジュール清掃は業者にお願いすることをおすすめしますが、費用はだいたい5万円程度というのが相場になります。

ほとんどの太陽光発電の汚れは雨によって流れてしまいますが、鳥のフンや葉っぱが何らかの影響で長期間パネル上に存在してくると不具合が起きる可能性が高くなります。

パネルの汚れが気になる方は、5年に一度程度パネルの洗浄を行ってもらえばよいでしょう。

メーカー保証の継続費用

メーカーが定める施工基準に沿って行った工事であればメーカー保証が無料で付与されます。

その期間はめーかーごとに違いますが、その無料で定められた保証期間を経過した後も、有料にはなりますが保証の継続する可能です。

金額も各メーカーによってまちまちになりますが、一例としてシャープのまるごと15年保証を紹介します。

まるごと15年保証(住宅用)費用

設置システム容量料金
〜1kW11,600円
1kW〜2kW12,600円
2kW〜3kW14,000円
3kW〜4kW15,200円
4kW〜5kW19,400円
5kW〜6kW25,000円
6kW〜7kW32,200円
7kW〜8kW35,000円
8kW〜9kW37,800円
9kW〜10kW39,800円

価格は税抜き価格になります。

産業用(10kW以上のシステム)であれば保証や保険も万が一を考えて加入する事を私もおすすめしますが、住宅用(10kW未満)のシステムであればそんなに過敏になって有料のメーカー保証に加入しなくてもよいかなというのが私の考えです。

というのも、太陽光発電に関するトラブルの大半は施工によるものだからです。

これは実績のある信頼のおける施工業者にお願いすれば、ほとんどミスもありません。

価格だけを頼りに、より安い業者に血眼になっているような方はかえって大きな代償をおってしまうかもしれません。

あくまでも適正範囲の中での価格の比較をおすすめします。

極端に安い業者は注意が必要です!

太陽光発電システム保守点検ガイドライン【住宅用】

太陽光発電システム保守点検ガイドライン【住宅用】とは、JPEA(太陽光発電協会)が独自に定めた太陽光発電システムを安全に使用する為の点検チェックシートのようなものです。

この点検チェックシートと点検についての考え方については、太陽光発電システムの点検は我々(設置者)と専門技術者(施工業者)が行なうものに分けられます。

ちなみに住宅用太陽光発電システムの保守点検は義務づけられているわけではなく、あくまでも任意によるものです。

※50kW以上の産業用太陽光発電システムについては1年に2度の点検は義務になっています。

設置者の点検項目

  • 太陽電池モジュールの表面の汚れ、破損、電線管の腐食、破損
  • 接続箱の腐食、破損、配線、電線管の破損
  • パワーコンディショナの腐食、破損、異常音など、配線、電線管の破損、表示部
  • 電力量計が正しく作動しているか

上記の項目を、我々は安全な場所から日常的に目視によって点検することがすすめられています

施工業者の点検項目

  • 太陽電池モジュールの表面の汚れ、破損、裏面の汚れ、フレームの腐食、破損
  • 架台,固定金具の腐食、破損
  • 架台の固定状態
  • 屋根葺材の破損
  • 防水処理
  • 屋根裏(野地裏、天井裏に結露、雨漏りの痕跡)
  • 配線、電線管の腐食、破損
  • パワーコンディショナの外箱の腐食、破損、扉の開閉、施錠、設置状態、配線,電線管の破損、防水処理、雷対策、自立運転機能、電圧
  • パワーコンディショナの内部(雨水、害虫、小動物の侵入がないこと、著しい汚れ、さび、腐食、傷、破損及び変形がないこと)
  • 電力量計が正しく作動しているか
  • 機器や部材の保証期間を確認

上記の項目を、施工業者は太陽光発電システムを設置して1年目、5年目、9年目、それ以降は4年ごとに屋根に登り、計測器を使って点検することをすすめています

訪問点検してくれる業者もある

業者によりますが、1年目、4年目、9年目などの周期で家に訪問してくれてにシステムの不具合を確認をしてくれるところもあります。

ここで不具合が見つかれば、メーカー保証を使うなりして機器の交換、修理をしてくれます。

太陽光発電は30年ほどの耐久性がある家の資産です。実際には太陽光発電のパネルはシリコンの結晶でできている石のかたまりです。

なので、パネル自体に不具合が起きる事はあまりなく、不具合が起きるのは周辺機器のパワーコンディショナや配線関係になります。

ここら辺の周辺機器のメンテナンスさえ定期的に行っておけば、半永久的に太陽光発電は活動してくれます。

その為、太陽光発電を売って終わりの業者ではなく、その後も面倒を見てくれる業者がおすすめです。

そうゆう意味でも、ただ安いからとかオマケしてくれるからとかの視点ではなく、業者の過去の実績や業績、料金、メンテナンスの有無など総合的に見て業者を選びましょう。

メンテナンスを怠る事で考えられるトラブル

上記で紹介した、太陽光発電システム(パネル、パワーコンディショナ、)のメンテナンスを怠る事で、システムに不具合、もしくは発電パフォーマンスに影響を及ぼす可能性が高くなります。

あくまでも可能性の話しではありますが、それでも太陽光発電は家にとっては資産ですし、何十年に渡ってお世話になる施設ですので、メンテナンスを怠ることで不具合リスクは高くと考えてよいでしょう。

考えられる不具合、リスクを紹介していきます。

ホットスポットによる発火

ホットスポットによる発火もある
ホットスポットによる発火の様子

ホットスポットとは、鳥のフンや落ち葉などが太陽光発電に乗っかり影になった部分の温度が高くなる現象を言います。

ホットスポットが発生すると、パネルが異常に高温にさらされることになり、最悪の場合発火にも繋がります。

ちなみに、2008年から2016年10月までの間に102件の発火事故が発生しています。
毎年10件以上の発火事故が発生しています。

ホットスポットの点検ではサーモグラフィを使った目視点検が行われます。

発電効率の低下

現在日本での主流なパネルの種類は3種類あり、それぞれに経年劣化具合が変わります。

  • 単結晶:0.7%程度低下
  • 多結晶:0.5%程度低下
  • CIS(化合物半導体):0.3%程度低下

この経年劣化具合(発電効率の低下)を高圧洗浄によって、パネルの表面に施されている強化ガラスを洗浄することで抑制させることができます

中にはご自分で屋根に登って家庭用の高圧洗浄機で掃除をしようとする方もいらっしゃいますが、危険ですし、何より業者が使う高圧洗浄機はガソリン式で一般で使用される電気式よりもはるかにパワーがあるものになります。

高圧洗浄でのメンテナンスを検討されている方は、業者にお願いすることをおすすめします。

パワーコンディショナの故障による売電中断

パワーコンディショナの基盤交換は任意ではありますが、怠るとかなりの高確率で故障へと繋がってしまいます。

太陽光発電システムでは唯一の電化製品(カラーモニタも電化製品ですが任意での設置になるため除外)になり、万が一故障するようなことがあれば売電も中断することになります。

というより、自家消費もできません。

これは、太陽光発電で作った電気(直流電流)はパワーコンディショナに集約され、そこから家庭で使える交流電流に変換され、家庭で使い切れなった余剰分が売電へと回る仕組みになっているためです。

故障してしまうと本体交換で20~30万の出費になってしまい、自家消費、売電にまで影響しますので、故障前のメンテナンスが必要になります。

メンテナンス費用まとめ

住宅用太陽光発電にかかるメンテナンス費用をまとめますと以下になります。

  • パワーコンディショナの基盤交換2万円~3万円
  • パネルの洗浄費用5万円~7万円
  • メーカー保証継続費用1万円~4万円

パワーコンディショナのメンテナンスが10年を目途に行う事をおすすめしていますので、その際に余裕があればパネルの洗浄も行ってしまえばよいでしょう。

なので、住宅用太陽光発電システムに関しては。だいたいの目安として10年ごとに5万円程度のメンテナンス費用が必要になります。

メンテナンス費用も計算して自分の家で太陽光発電を設置したらどれだけのメリットがあるのかシミュレーションをしてもらうようにしましょう。

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