産業用太陽光発電で利回り10%のワケ

産業用太陽光発電のシミュレーションポイント

住宅用と違い産業用太陽光発電では、シミュレーションのポイントが違ってきます。

ポイントの一つとして、メンテナンス費用、固定資産税、保険やメンテナンス費用などのランニングコストを含んで収益の計算をすることにあります。

産業用太陽光発電の場合、投資として捉えて収益だけでなく出ていくお金(経費)も計算して、収益の確認をします。

特にメンテナンス費用やサービスなんかは業者によってまちまちですので、利回りを上げるために安くて良い品質のメンテナンス会社を探すことも収益の向上のために大切なポイントになってきます。

産業用太陽光発電は利回り10%程度が目安

産業用太陽光発電の場合、一つの目安として利回り10%という数字が挙げられます。

10%よりも低ければ割高な投資となりますし、10%よりも高ければお買い得な投資案件となります。

ただ、これは借りる金額や金利などによっても変動してきますので、単に太陽光発電システムの価格だけでシミュレーションしてもらうのではなく、総合的な数字でシミュレーションしてもらうことをおすすめします。

固定資産税とは

固定資産とは、営業用の土地、建物、機械、特許権などのことを言い、その固定資産の価格を元に算出された額を固定資産の所在する市町村に納める税金のことを固定資産税と言います。

マンションやアパートを賃貸している人には固定資産税はかからず、マンションやアパートを所有しているオーナーに固定資産税がかかってきます。

また固定資産は、有形固定資産と無形固定資産に分かれます。

《有形固定資産》

  • 建物附属設備
  • 構築物
  • 船舶
  • 航空機
  • 車両運搬具
  • 工具
  • 機械装置

《無形固定資産》

  • 特許権
  • ダム使用権
  • 水利権
  • 商標権
  • ソフトウェア
  • 営業権

産業用太陽光発電は有形固定資産に分類されることになりますね。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、評価額×税率(標準税率1.4%)で計算することができます。

※標準税率とは、地方自治体が通常課税する時に用いる税率のことです。

評価額は法定耐用年数によって年々下がっていきます。
産業用太陽光発電の場合の法定耐用年数は17年になるので、初期費用で要した設置費用が17年をかけて評価額が下がってきます。

評価額が下がっていくので年々固定資産税は下がっていきますが、産業用太陽光発電の場合の固定資産税は17年間発生することになります。

産業用太陽光発電には固定資産税の特例措置がある

産業用太陽光発電が投資の的として熱い注目を集めている要因として、固定資産税の特例措置が使えることにあります。

産業用太陽光発電における特例措置とは、設置から3年間は固定資産税が3分の2に軽減されるありがたい取り決めのことです。

しかも、設置1年目の減価率は通常の半分になります。
特例措置で受けられるメリットが大きいということで、産業用太陽光発電が注目されているわけですね。

※減価率とは、一時的に発生した支出を耐用年数に応じて分割して費用計上する減価償却費を毎年一定額づつ減額するように費用配分する方法(会計処理)のことです。

実際に産業用太陽光発電の固定資産税を計算してみよう

2,000万円の産業用太陽光発電を設置した場合の固定資産税の計算をしていきます。
産業用太陽光発電の耐用年数は17年で減価率は0.127になります。

《1年目》
まずは評価額を計算します。
20,000,000円×(1-0.064)=18,720,000
※1年目の減価率は通常の0.127ではなく半分の0.064になります。

1年目の固定資産税
18,720,000円×1.4%×2/3=174,720円
※1年目は特例措置で固定資産税が2/3に軽減されます。

《2年目》
まずは評価額を計算します。
18,720,000円×(1-0.127)=16,342,560円

2年目の固定資産税
16,342,560円×1.4%×2/3=152,530円
※2年目も特例措置によって固定資産税が2/3に軽減されます。

《3年目》
まずは評価額を計算します。
16,342,560円×(1-0.127)=14,267,054円

3年目の固定資産税
14,267,054円×1.4%×2/3=133,159円
※3年目まで特例措置によって固定資産税が2/3に軽減されます。

《4年目》
まずは評価額を計算します。
14,267,054円(1-0.127)=12,455,138円

4年目の固定資産税
12,455,138円×1.4%=174,371円
※4年目以降は特例措置がなくなりその年の評価額に1.4%を掛けて固定資産税を計算していきます。

全量買取と余剰買取の比較

2,000万円の産業用太陽光発電を設置した場合の固定資産税の計算をしていきます。

産業用太陽光発電の耐用年数は17年で減価率は0.127になります。

《1年目》

まずは評価額を計算します。

20,000,000円×(1-0.064)=18,720,000

※1年目の減価率は通常の0.127ではなく半分の0.064になります。

1年目の固定資産税

18,720,000円×1.4%×2/3=174,720円

※1年目は特例措置で固定資産税が2/3に軽減されます。

《2年目》

まずは評価額を計算します。

18,720,000円×(1-0.127)=16,342,560円

2年目の固定資産税

16,342,560円×1.4%×2/3=152,530円

※2年目も特例措置によって固定資産税が2/3に軽減されます。

《3年目》

まずは評価額を計算します。

16,342,560円×(1-0.127)=14,267,054円

3年目の固定資産税

14,267,054円×1.4%×2/3=133,159円

※3年目まで特例措置によって固定資産税が2/3に軽減されます。

《4年目》

まずは評価額を計算します。

14,267,054円(1-0.127)=12,455,138円

4年目の固定資産税

12,455,138円×1.4%=174,371円

※4年目以降は特例措置がなくなりその年の評価額に1.4%を掛けて固定資産税を計算していきます。

全量買取と余剰買取の比較

この全量買取、余剰買取は設置するシステムの大きさによって振り分けられるだけでなく、いろいろと仕様が違うのでそれぞれを比較してみましょう。

売電価格 期間 システム出力
全量買取 12円 20年間 10kW以上
余剰買取 19円 10年間 10kW未満

※2021年の売電価格

現在では、屋根だけでなくカーポートや庭などを利用して自宅でも10kW以上のシステムを組むお宅が増えました。

ちなみに10kW以上のシステムでは、全量買取か余剰買取のどちらかを選ぶ事ができます。(買取期間は20年です)

そこで全量買取と余剰買取どちらのほうがオトクになるか発電メリットをシミュレーションしてみます。

【条件】

  • 家族4人
  • 昼間には誰もいない
  • 月の電気代は約15,000円(394kw)
  • おトクなナイト10(昼間の電気代34円)
  • 真南屋根
  • 10kWシステム

全量買取

10,000kW(一年間の発電量)×12円=120,000円(発電メリット)

余剰買取

15,000円×12ヶ月=180,000円(一年間の電気代)

180,000円×30%(昼間誰もいないので夕方と休日に電気を使った割合)=54,000円(買わずに済んだ電気代)

10,000kW−4,728kW(394kW×12ヶ月)=5,272kW(余剰電力)

5,272kW×19円=100,168円(売電収入)

100,168円(売電収入)+54,000円(買わずに済んだ電気代)=154,168円(発電メリット)

今回のシミュレーションでは、余剰買取の方がオトクという形になりました。

ただし、電気の使用割合によって全量買取、余剰電力とオトクな方は変わってきます。

また計算しやすいように端数は切り捨てて計算しています。

あくまでも参考にしていただき、設置時のご自宅のライフスタイルでシミュレーションしてもらってみてください。

ソーラーフロンティア10.2kW

  • 太陽光発電システムの総費用は2,290,000円(税込2,473,200円)
  • ソーラーフロンティア太陽光発電システムを10.2kW
  • 年間メンテナンス費用5万円で計算
  • 年間保険料2万円で計算

イニシャルコスト

太陽光発電システム費用 2,473,200円

ランニングコスト

保険代20年間 400,000円
メンテナンス費用20年間 1,000,000円

減価償却

償却年数 17年
定率償却率 11.80%
改定償却率 12.50%
償却保証額 99,917円

借入条件

借入額 2,473,200円
年利 1.5%
返済期間 15年
トータル借入利息 290,198円
トータル返済額 2,763,398円

予想収益

売電価格 24円
年間予想売電額 244,800円
20年間予想売電額 4,749,120円
20年間予想キャッシュフロー 585,722円
年平均キャッシュフロー 29,286円

Nodatex太陽光発電31.2kW

  • 太陽光発電システムの総費用は5,900,000円(税込6,372,000円)
  • Nodatex太陽光発電システムを31.2kW
  • 年間メンテナンス費用10万円で計算
  • 年間保険料3万円で計算

イニシャルコスト

太陽光発電システム費用 6,372,000円

ランニングコスト

保険代20年間 600,000円
メンテナンス費用20年間 2,000,000円

減価償却

償却年数 17年
定率償却率 11.80%
改定償却率 12.50%
償却保証額 257,429円

借入条件

借入額 6,372,000円
年利 1.8%
返済期間 15年
トータル借入利息 903,631円
トータル返済額 7,275,631円

予想収益

売電価格 21円
年間予想売電額 655,200円
20年間予想売電額 12,710,880円
20年間予想キャッシュフロー 2,835,249円
年平均キャッシュフロー 141,762円

日立太陽光発電55.08kW

  • 太陽光発電システムの総費用は19,500,000円(税込21,060,000円)
  • 日立太陽光発電システムを55.08kW
  • 年間メンテナンス費用10万円で計算
  • 年間保険料3万円で計算

イニシャルコスト

太陽光発電システム費用 21,060,000円

ランニングコスト

保険代20年間 600,000円
メンテナンス費用20年間 2,000,000円

減価償却

償却年数 17年
定率償却率 11.80%
改定償却率 12.50%
償却保証額 850,824円

借入条件

借入額 21,060,000円
年利 2%
返済期間 15年
トータル借入利息 3,334,127円
トータル返済額 24,394,127円

予想収益

売電価格 32円
年間予想売電額 1,760,000円
20年間予想売電額 34,144,000円
20年間予想キャッシュフロー 7,149,873円
年平均キャッシュフロー 357,494円

産業用太陽光発電シミュレーションまとめ

3つパターンの産業用太陽光発電のシミュレーションを計算しましたが、どれも運用パフォーマンスでいうとまずまずと言ったところでしょうか。

ただ、産業用太陽光発電の場合、不動産投資のような空室のリスクがないので、ほぼシミュレーション通りの収益となり安定したパフォーマンスとなります。

⇒ 太陽光発電と不動産投資でどっちのが儲かる?

もちろん太陽の光を利用した投資になりますので気候にパフォーマンスが左右されてしまうのはありますが、業者で使用するシミュレーションで使う発電量はその地域の10年間の日射量の平均データを使うことになるので、20年間というスパンでならすとほぼ同じになるでしょう。

産業用太陽光発電はとんでもなく儲けられる投資案件ではありませんが、リスクを極力排除した安定した投資案件だと言えるでしょう。

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